医師は余るのか

 

 Twitterをやっていると、「将来医師が余りますか、それとも足りないままですか」といった質問が多い。僕のフォロワーさんは医師・医学生が多いので、恐らく自身の将来を心配してのことだろうと思う。

 

医師需給の詳細については、厚労省の医師需給分科会などの資料や議事録をみるとだいたい把握できるのでそっちを参考にしてほしい。ここではブログでもあるし、僕の思っていることを、今回はデータなしで徒然に書いておこうと思う。

 

臨床医についてはここ10~20年ほどで需給のバランスはとれるのだろうと僕は思っていて、国の見解とだいたい同じである。臨床医の顧客は患者なわけであるが、今は人口が減り、これからそのスピードは加速するフェーズなので需要減少は必至である。高齢化でちょっと需要は持ちこたえるかもしないが、団塊の世代がいらっしゃる間(ここ10~20年)だけの話になると思う。一方で新しくお医者さんになる人は毎年増えていて、民主党政権の医師養成数増加策の効果も順調に現れているようだ。実際に医師の有効求人倍率は毎年減ってきている。それでも他業界と比べればまだまだ倍率は高い。だから今は平均的にも医師不足なのだけど、徐々に解消されている段階だとみている。

 

医師の過重労働が問題になっているから、それを是正すれば医師はやっぱり足らないのではないかという指摘も飛んでくるだろう。まあそうかもしれないが、病院数は年々減ってきているし、これに昨今の病院の集約化や再編、在院日数短縮、病床数削減、タスクシフティング等、効率性を上げ相対的需要を減らす取り組みが加われば、上の医師の数と患者の数の動きに飲み込まれてやっぱり、ここ10~20年で平均的にバランスがとれるのだと思う。

 

将来的に医師需給は均衡するとはいっても、これはあくまで平均の話で、地方とか、夜間とか、人気のない診療科だとやっぱり医師不足は続くのだろうと思う。よくも考えてみよう。子供の数がこれだけ減っているのに今小児科医の数が足らないはずはないのだが、現場の声はそれでも足らないということになっている。実際に足りている・足りてないはデータも見せてないので議論はしないが、おそらく夜間救急対応する小児科医や、田舎の小児科医は実際に足らないのだろう。逆に、都会の小児科開業医の先生が集患に苦労をしているのをみるにつけては、昼間で都会だと競合が多いわりに需要が少ないといった事情があるかもしれない。なので、将来的に医師需給がバランスしても、上の例のような平均から外れて生じる医師不足をいかに解消できるシステムを構築して、それでいて優秀な医師なのに職にあぶれてしまう人をいかに作らないかが、今後の行政の腕の見せ所になるようにも思う。

 

今は特に医師養成数の調整が難しい時期だと思う。というのも、現在、医師は平均的にも足りてないから医師を増やしたいという声は大きくなりがちなのだけど、だからといって今から増やしても医師養成には10数年かかるから、タイムラグで需要が減少し医師が飽和する事で結局無駄な増員となる可能性が増えてしまうからだ。ここを見誤って今の調子で医師を増やし続けると、2040年頃には弁護士や歯科医師界、アカデミアと同じ運命が医師にも待っていることだろうと僕は思っている。

 

ちょっと論が雑になってしまったけど、僕の考えは簡単に書けた気がするのでこの辺で。